あるロケハンの日、降り出した雨にカメラをかばいながら公園を駆け抜けていると、向こうから傘もささずに、にこにこした女性が歩いてきました。

私は東屋に避難しながら、「あの人はどうして雨にぬれながら、笑顔で空を仰いでるの??」と、こっちに歩いてくる女性から目が離せませんでした。

あまりにも見ていたらしく、最後には目が合ってしまい。。。

気まずくて、何か言わないとと思い、カメラをジャケットの内に抱えて女性にかけよって、どうしてか聞いてみると「ここに時々来て、木とおしゃべりしてるのよ」と、嫌な顔ひとつせずに、花のように私に笑いかけました。

空を見ていたんじゃなくて、樹々を仰いでいたみたい。

あまりにも朗らかで、すごく美しい笑顔だったので、「しゃべってるとこ、写真に撮ってもいいですか?」と小脇に抱えていたローライを取り出して聞くと、珍しそうに二眼レフを見つめて、そっとたたずんでくれました。

妖精みたいだ。。。

2枚だけ撮らせていただくと、にこにこと私に手を振って、彼女は森の中に歩いて行ってしまいました。

プリントした写真もすごく美しくて、これは私にとってのひとつしかない物語になりました。

撮影日:2012年 5月15日
場所:小石川植物園

まさに木の精だと、私は確信しています。